特集 ウィニコット・フォーラムに思う:事務局と臨床活動の両軸の関係

 11月3日(日)に、当クリニックが事務局を担当した、ウィニコット・フォーラム2019が開催されました。(ウィニコット・フォーラムについては、日本ウィニコット協会のHP:https://www.winnicottforum.comをご覧ください。)

 当日はシンポジウム、講演、ウィニコットの代表的な症例である「抱えることと解釈」の検討と、盛りだくさんのプログラムで、122名の先生方が参加されました。院長をはじめとしたスタッフも登壇し、フォーラムは自由な空気のなか、“遊び”を持って活発な議論が展開され、盛会のうちに終えることが出来ました。

 クリニックスタッフの多くも、フォーラムの事務局や当日スタッフとして、参加しました。昨年のISAPP/JSAP大会もですが、私は、こうした大会や研修会などの運営も、臨床の一環であると考えています。

 私たちの仕事は心理療法がクローズアップされがちですが、実際にはそうした時間は僅かなのです。毎週1回(あるいは複数回)・50分という時間を確保しようとすると、それ以外の多くの仕事の部分をマネージメントする能力が必要になります。それはきっと患者さんも同じではないでしょうか?そのように考えると、2人の人間が同じ時間を確保して会い続けるということの意味合いが、ただ会っているだけという認識から、変わったものにならないでしょうか??

 また、このようにも考えられます。心理療法では、お互いの無意識の部分が展開するのですが、それを促進させるために、日常とはチョット異なる状況(設定)を工夫します。そして心理療法の導入では特に、無意識が展開するように意識的な作業を行うことも必要なのです。尖った言い方をすれば、“現実を取り扱うことが出来ない人間が、無意識を取り扱うことは難しい”ということです。事務局というのは、こうした感覚や方法を養うことに繋がるのだと言えます。

 事務局は、極めて臨床な営みです。

(文:石田拓也)