臨床コラム メンタライゼーションとは?

las_20834新しくて、あたりまえの心の機能

メンタラーゼーションという治療法が、最近では注目を集めています。Holding mind in mindと表現される「心をつかって、自分や相手の心を汲み取り考える」心のはたらきを活性化させる治療法です。

メンタライゼーションということばは、私たちには馴染みのないことばですが、実はずっと古くからごく自然に使っていたこころの働きなのです。この心の機能があることで、私たちは人として、他者と気持ちを分かち合ったり、交流をしたり・・と、相互交流を交えたコミュニケーションができるようになります。

カウンセリングとメンタラーゼーション

カウンセリングでは、クライエントと呼ばれる相談する人とセラピストと呼ばれる治療者(カウンセリングの場では大抵は臨床心理士)が、その交流を踏まえて、心の動きを見つめる作業を積み重ねていきます。45分から1時間程度のカウンセリングで、日ごろの生活の中では気づかなかった出来事や行動を振り返りながら、ゆっくりと自分の心を見つめていくことで、その瞬間瞬間で自分の心が動いていることに気づくようになります。

その心の動きは、時には、やりきれない気持ちが浮かび上がってくることがあるかもしれません。またある時には、なぜか無性にイライラした気持ちがこみ上げてくるかもしれません。時には悲しい気持ちが心の奥底からこみ上げてくるかもしれません。しみじみとした幸せに気づくことがあるかもしれません。このように、自分の心をゆっくりと見つめていくと、普段の生活の中で気づかないでいた気持ちや、置き去りにされてきた“本当の自分の心の動き(本来あるべき心の動き)”に気づいていくことができます。このように、自分の本当の心の動きを取り戻すことで、本来のありのままの自分を取り戻し、生き生きとしたこころで生活していくことが可能となります。

ただ、この心の動きを取り戻していく作業は、心を動かすことをあまりしないでいた時間が長ければ長いほど、一人でおこなうのはむつかしいかもしれません。慣れていないうちは、赤ちゃんが自分の気持ちを汲んで理解してもらって、受け止めてもらって、さらに気づかせてもらえるようなお母さんのような役割をした伴走者が必要になります。

カウンセリングでは、その役割をセラピストが担います。うまくいかないことや、心が重いとき、あるいは気づかないうちにストレスがたまっているな・・と感じられたときは、一度ゆっくりと自分自身の本当の気持ちに気づいてあげるメンタライゼーションの時間をもたれてもいいのではないでしょうか・・。忙しすぎる毎日で、後回しにしてきた自分の心に向き合うメンテナンスも、健康に生活していくためには必要かもしれませんね・・。

★メンタライゼーションについて興味を持たれた方は、「特集 メンタライゼーション」もご参照ください。

(文:川野由子)