臨床コラム とある心理士のとある日の頭の中

 久々にコラムの担当が回ってきて、何を書こうかと考えていたら、こんなにも遅くなりました。いつも私はこんな感じですね。今日は日々過ごしている中で“ふと思い浮かんだこと”について書いていきます。

 とある職場の勤務で、私は機嫌の悪かった日がありました。あまりにも機嫌が治まらない私は、ついスライド式のドアに八つ当たりをしてしまいます。すると、ドアの滑り具合がすごく悪くなりました。力が相当強かったようで、部品が破損してしまったんですね。上司に伝えて半年が経ち、最近ようやく修理してもらうことになりました。滑りの悪い扉は開け閉めをする際に、今までよりも少し力を加えなければなりません。その力加減を半年ほど続けていると、今度、直った時に力加減がわからなくなってしまいました。要は、力を入れすぎるので、再び扉を壊しそうになったんです。元の力加減を取り戻すのには数日間必要でした…。

 この力加減の難しさを知った時、扉に対してだけではなく、人との関係の中でも通じるものがあるなあと思い浮かびました。例えば、仲の良い友達がいたとします。その子といろんな話で盛り上がっている間は相手と一緒にいる時間や予定が楽しみでいっぱいになります。しかし、何かのきっかけで喧嘩やトラブルが生じた時、どちらかが怒り出すかもしれません。感情を露にしなくても、自分から(相手から)距離を置いたりして、今までの交流がはかれなくなってしまうこともあるでしょう。その状態のまま放置して疎遠になるというパターンもあります。人によっては、何とか仲を戻そうと揉めたことについて話したり、時間が経った時に声をかけてみたりもするでしょう。けど、仲が修復された当初はどこか気まずく、ギクシャクしてしまい、直ぐに以前の状態に戻るには時間がかかってしまうこともありますね。ただ、扉や物だと修理して元の力加減を以前のように取り戻すだけで終ってしまいます。しかし、人との関係は、元と同じような関係に戻るだけとは限りませんよね。以前以上に仲良くなることもあれば、修復できなくなることもあるでしょう。

 すると、より相手との仲が深まれば良いですが、深まらなかった時、どうしたらいいんだろうという疑問が浮かんできます。実際「こうしたらいいんだよ」という魔法の言葉・方法はないんです…。ただ、私自身がいつも気に留めているというか、頭に置いていることは、「自分がその人(相手)との関係をどうしたいか」ということです。恐らくですが、不仲になったときに頭に浮かぶことは、「相手に嫌われたかも」「何とかして元に戻さないと」など、“修復する”ということが多くありませんか?確かにそこは気になります。ですが、そこばかりに注目していると、徐々に自分がどうしたいのかという視点から外れていってしまいます。相手との仲を続けたいとか、会社や学校で今後この人との関係を続ける必要性が高いと思ったら、修復するために考える必要があります。しかし、今回1回しか会わない、今後会う予定が恐らくないなどの状況であれば、ずるいかもしれませんが「放置する」という選択もありではないかと思います(こんなこと言っていいのかわかりませんが…)。「自分は仲を修復したくないけど、今後のことを考えるとしておいた方が良い」というのは、一番難しくて厄介ですよね。私でもわかりませんし、悩んでしまうところです。自分の中で色んな自分と対話して、それでも苦しい時は誰かと対話することが大切なのかもしれませんね。そうする中で、「自分はどうしたいのか」ということをジワジワ輪郭付けしてあげれると良いですよね。

 ということを、扉の事件から思い浮かべていました。文字に起こすとこんな量になってしまって、自分でもびっくりしています。以上が、とある私の頭の中の思考でした。

(文:平井三喜)